2009年11月28日

上映終了

エンドロールが始まる。会場は盛大な拍手に包まれた。帰った観客はいない。
受け入れられた……そう思った瞬間だった。
1000年近い歴史あるカトリックの教会で日本の時代劇が上映される。それは計算されたかのような113分間の美しい時空だった。
イタリア人はエンドロールを見届ける習慣がないようで、せっかくの野崎君の名曲がざわつきにかき消されてしまったのが残念!
エンドロールが終わって再び舞台に上がる。それでもまだ100人近くの観客は残っている。
今度は池谷さんにも登壇してもらう。

2009-11-28 (136).JPG次に『となりのトトロ』の上映を控えているのでほんの短時間だが、ティーチインが始まる。
「黒衣には仏教的意味合いがあるのか?」
「ラストショットに役者絵の『宮城野』が映し出されたが、劇中の美人絵の『宮城野』とはどうつながるのか?」
質問は深い。これらはしっかりと内容を理解していなければ出てこない質問だ。翻訳が的確だったに違いない……。
花束を受け取り舞台を降りる。

これで『宮城野』の初イタリア・ヨーロッパ・海外上映が終わった。300人以上の観客が誰も帰らなかった。しかも深い理解を得られた。出品者としてこれ以上の幸せはない。
非常にフランクで感情を顕わにするのがイタリア人と思っていたが、フィレンツェ市民はそうでもないらしい。これはいくつかのプレ・イヴェントを通じて僕も実感した。それは京都人のような雰囲気かもしれないが、古都ゆえの奥ゆかしさと保守性、それに深い審美眼を持ち合わせていてるのがフィレンツェ市民である。そんな彼らに『宮城野』が受け入れられたのは、こんな幸せはない。

2009-11-28 (187).JPG映画が始まってすぐ、『宮城野』というメインタイトルがスクリーンめいっぱいに映し出された。正直、監督として涙が出た。ちょろっとだけど。このためにどれだけ我慢を重ねてきたか……。エンドロールの拍手じゃなくて、オープニングだったのはなぜだろうか。

上機嫌のまま、池谷さんや映画祭スタッフと食事に行く。そこで朗報が! 明日予定されていた『アキレスと亀』が配給会社の都合により上映中止に。そこで『宮城野』を追加上映したいと。明日のことだから告知はほとんど届かない。動員は難しいかもしれない。それでも僕は快諾した。だって後で「世界のキタノを押しのけての追加上映」って冗談半分に威張れるだろうから。
posted by 山崎達璽 at 23:56| フィレンツェ報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『宮城野』上映開始

袴をつけて16:30ぐらいに会場に入る。またまた驚くべきことにいまだに映写技師がフレームを合わせている。その不慣れな様子にイライラが隠せない。映写準備は開場時間になっても続く。
外の様子を聞いたら教会前広場に人があふれているとか。

2009-11-28 (50).JPG「あふれている?」
まさかである。そして、これ以上人が集まると道路にはみ出して危険だから入場させますとのこと。
人がどんどん入ってくる。会場はあっという間に満員。でも、このままじゃ映写が完璧じゃない……。

2009-11-28 (67).JPG予定より30分以上遅れて舞台挨拶があり登壇。

2009-11-28 (93).JPGフィレンツェ大学の鷺山教授の通訳で20分ぐらい話す。今回の映画祭で唯一のゲスト監督ということもあり、観客はとても温かく迎えてくれた。こんなにウケがいいのは初めてかもしれない。
そしていよいよ上映開始。
しかし! スクリーンと映写がずれている。やっぱり!! 暗闇の中、立ち上がって映写BOXに走っていく。映写を止めさせようと窓をガンガン叩く。実行委員長が走ってくる。
「だめだ、映写を止めろ!」
珍しく怒鳴った。映写技師は今止めたら、再開するのに10分掛かると言って、いわゆる逆ギレを始めた。
「止めろ!!」
また怒鳴る。
実行委員長が青ざめている。
「とにかく止めさせてください。10分は僕がしゃべってつなぎます!」
映写機が止まった。
僕には何のプランもない。深呼吸をして、精一杯の笑顔を作った。そしてスクリーンに向かって歩き出す。マイクを受け取って舞台に上がる。ボランティアの日本人男性スタッフが急遽通訳に。漫談でも何でもしてとにかく10分間つなぐしかない。まず舞台から観客に向かってデジカメを向けて写真を撮る。
「これは舞台に上がった僕だけの特権です」
これが意外に観客に受ける。
「監督はどうしても完璧な状態で皆さんに映画をお見せしたいんです!」必死の思いは伝わった。
「現代人の僕は日常的に着物を着ている訳じゃないんです。普段は彼のようにジーンズです。だから足元がスースーして寒くて」と言って、袴の裾をまくって見せた。これがまた大ウケ。人前でこんなことをするのは人生初だと思う。
文字通り漫談をしているうちに映写準備が整う。結果1時間近くの遅れで映写が開始された。


posted by 山崎達璽 at 23:28| フィレンツェ報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

上映準備

映写チェックのため昼過ぎに会場に入る。

2009-11-28 (17).JPG1000年近く前に建てられたというサント・ステファノ(S.Stefano)教会が今回の映画祭のメイン会場である。この映画祭の企画、やっぱり尋常じゃない。

2009-11-28 (18).JPGまずは字幕の打ち合わせ。スクリーン下のプロジェクターから台詞に合わせて一つ一つクリックしながらイタリア語字幕を出していく。技師の女性はほとんど徹夜でシミュレートをしてきたとか。本番は日本人学生のボランティアがアシスタントとしてつく。

今度は映写機のチェックを……。ここで驚くべきことが! 35mmの映写機が一台しかない。通常35mmの長編映画は、だいたい20分毎にロールに分けて、2台の映写機を使って交互に映写していく。ここは特設だからそれができないとか。よって前半と後半に分けて、途中でフィルムの掛けかえの休憩が入ってしまうんだそうだ。イタリア人はそれには慣れっこだから心配は要らないというが……。しかもこの映写技師は本当のプロなのだろうか。映写機の扱いに慣れが感じがないし、なんというか映画への愛が伝わってこない。映画愛こそこの映画祭の主軸ではないのか。

とりあえず着物に着替えるためにホテル帰る。そろそろ池谷さんが着く頃だろうか。『宮城野』の美術監督の池谷仙克さんがスペシャル・ゲストだ。
posted by 山崎達璽 at 14:17| フィレンツェ報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月27日

明日はいよいよ『宮城野』上映

映画祭初日、とっても充実した楽しい一日だったがクタクタだ。
いよいよ明日は『宮城野』の上映だ。イタリア初上映、いやヨーロッパ初上映、いやいや海外初上映である。
心配は山ほどある。カンヌやヴェネチアなどの国際映画祭は映画業界人が主な観客だが、この映画祭はフィレンツェ市民が対象である。そもそもイタリアの一般人には字幕で外国映画を見る習慣はないらしい。その上、日本アニメは親しみがあるが、日本映画、まして現代の時代劇(黒澤や溝口はさすがに知名度抜群)にはほとんど馴染みがない。評価の定まった監督の人気作品がラインナップされる中で無名の新人監督の初長編商業映画、しかもかなりアート指向の強い野心作なんて観客が集まるのだろうか。イタリア人はつまらなければすぐに席を立ってしまうとか……。
この心配は実行委員長の松本さんから今回のお話をいただいてからずっと続いている。もう半年以上だ。300人の定員のうち半分でも埋まってくれれば……。そのうちせめて半分、つまり75人でも最後まで観ていってくれれば……。もう今夜はノイローゼだ。睡眠導入剤を飲んで寝よう。
posted by 山崎達璽 at 23:50| フィレンツェ報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月23日

ローマにて

成田を出てから13時間近く、ようやくローマに着いた。これだけ長時間じーっとしていたせいか、風邪が良くなった気がする。これからイタリアの国内線に乗り換えて、いよいよフィレンツェだ。

※ここからはイタリア現地時間
posted by 山崎達璽 at 20:13| フィレンツェ報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

成田にて

多少風邪はよくなったもののとても飛行機に乗れる身体じゃないような……。でも、もはや引き返せない。携帯電話は借りたし、よし、いざアリタリア航空へ。14:20成田発で、12時間40分後にローマ着だ。
posted by 山崎達璽 at 13:45| 筆のすさび | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月22日

明日出発だというのに……

明日出発だというのに、風邪を引いた。喉は痛いし、鼻水が止まらない。熱も出てきた。飛行機、大丈夫かなあ。
posted by 山崎達璽 at 23:35| 筆のすさび | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月20日

ようやく渡伊準備に取りかかれる。

ようやく離日前にやるべき仕事が片付いた。今夜は睡眠導入剤を飲んで熟睡をしよう。土日は渡伊の諸準備。まずは整体に行かなければ。

いつも使っている携帯を持って行くのはやめようと思う。しょうもないメールを受信しただけで結構なお金が掛かるとか。一応緊急連絡用として成田でレンタルする予定。留守電の応答メッセージにレンタル携帯の番号を入れておきます。
posted by 山崎達璽 at 23:58| 筆のすさび | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月19日

インフルエンザ厳戒態勢

image/2009-11-19T21:39:281フィレンツェの話が本格的に動き出したのはここ2ヶ月。新型インフルエンザが猛威を振るい始めたのと重なる。健康オタクの僕は厳戒態勢だ。渡伊まで1週間を切ったから、今掛かったらもう治らない。終日マスクで手洗いうがいは日に20回ペース。もはや小児科医クラスだ。

ふと気付くと、ここ半年以上風邪を引いていない。ひょっとしたらアメリカから直輸入しているサプリメントのおかげかもしれない。のどにつかえる恐怖感にかられ、一錠飲むたびにゲップをしなければならない、尋常じゃない大きさのサプリ。これを飲み続けることによって免疫力がついてるような気がする。
posted by 山崎達璽 at 20:56| 筆のすさび | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月18日

渡伊

渡伊って表記はなんだか変だ。渡米や渡仏はありだが、渡伊ってのはやっぱり変だ。活動情報のページにはアップされているが、今月末にフィレンツェの日本映画祭で『夢二人形』と『宮城野』の上映があって“渡伊”することになった。
忙しいときは重なるもので、目下、渡伊準備を主軸にいろんなことにてんやわんやだ。
男きもの派宣言から1年以上が経ったこともあり、映画祭関連イベントには全て着物で臨むつもりだ。いつものように山喜屋さんに衣裳協力をお願いして、早々に送っていただいているのだが、そちらもなかなか手をつけられず……。
出発は月曜。準備が間に合うか心配だ。
posted by 山崎達璽 at 23:40| 男きもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月13日

奉祝 一夜明けて

image/2009-11-13T10:12:001昨夜はテレビでご在位20年を祝う祭典の中継を観た。皇居前広場に集まった3万人が手にした奉祝の提灯と日の丸が壮麗である。絢爛豪華ではなく、究極にそぎ落とされた簡素な美に厳かさがまとうというのがご皇室の伝統である。
EXILEが出たのがまたいい。最初は誰もが「?」だったはずだが、実際その姿を目にすると妙に納得してしまう。ふだんは長髪・ピアス・サングラスの彼らが極度の緊張の中でEXILEらしく威儀を正して祭典に臨む。それをみんなが目の当たりにすることに意義がある。陛下の懐に飛び込んで抱かれているかのようだ。
二重橋にお出ましになった両陛下のお姿が神々しい。手にされた無地の提灯にお顔が照らし出され、夜空に浮かび上がる……歌舞伎の舞台で例えるならば、花道の面灯りの演出である。本舞台では当世随一の花形役者(EXILE)が歌い踊っている。陛下のお言葉「寒くはないですか?」はアドリブであろうか。そんな一言を捨て台詞(本来はアドリブのこと)を残し、万雷の拍手の中花道を後にされた。

思えば20年前のこの日は祝日だった。「あさくま」にステーキを食べに行ったら、店員がみんな奉祝のネームプレートを付けていたのを覚えている。あれ、なんで祝日にならないんだろう? でたらめな首相の祝辞に心からの祝意はこもっているのだろうか?
posted by 山崎達璽 at 10:13| 保守派 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月12日

奉祝

image/2009-11-12T17:51:381名君の誉れ高き今上陛下がご即位されて20年が経った。激動の昭和というが、平成の御世も大変な日々の連続だなぁとつくづく思う。
しかしこういうおめでたい日を迎えると、連綿と続くご皇室を戴くこの国に生まれてよかったとひしひしと感じる。両陛下のお姿を拝見すると清々しく誇らしい気持ちになれる。
ご皇室の弥栄を願ってやまない。
posted by 山崎達璽 at 17:53| 保守派 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月05日

『サイドウェイズ』

『サイドウェイズ』を観る。文句なし、今年のベスト3に入るだろう。アカデミー賞受賞作のリメイク、しかも外国人スタッフと日本人キャストによる日米合作である。この手の映画は必ずオリジナルと比べてどうこうという議論が起こるが、僕にとっては愚の骨頂、そんなことはどうでもいい。オリジナルは観てないし、存在もよく知らない。
さすがに外国人監督だけあって、全編を貫く軽妙洒脱な空気感は日本人には作れないだろう。キャストと資本では日米合作だが、これは実質的には日本向けのハリウッド映画である。
出演者がみんな実にいい。いい味を出してるとはまさにこのことを言うのではないか。小日向文世と鈴木京香のキスシーンはぐっと来たなぁ。
「大人のためのほろ苦コメディ」が作品のウリ。しかし僕らはいつ、何をきっかけにして大人になるのだろう。いつ大人になったと感じるのだろう。
posted by 山崎達璽 at 16:38| 映画レヴュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月02日

『悪夢のエレベーター』

佐津川愛美さんが出てるということだけで何の予備知識もなく『悪夢のエレベーター』を観る。
かなりダークだがなかなか面白かった。物語の視点が誰にあるのかが今一つ分かりにくく、そこらへんのバランスの悪さはちょっと気になったが……。相変わらず佐津川さんは輝いてたなぁ。
posted by 山崎達璽 at 22:49| 映画レヴュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『This Is It』

『This Is It』を観る。
対米是々非々保守派とはいいつつも、しょせん僕はミーハーだ。中学の頃はマイケル・ジャクソンの『スリラー』や『BAD』を普及し始めのCDで聴きまくっていた。だからマイケルの死はショックだった。
リハーサル記録を中心にまとめ上げたこの作品はなかなかの名作だった。そりゃ僕らの抱くマイケル像を損なうことがないように慎重に取捨選択がなされているはずだが、それでもやはりマイケルは偉大だ。
マイケルはイヤホンを付けた状態で歌うのに慣れていなかった。返し(モニターの音)が大きすぎて歌えないとリハーサルを中断。現場に緊張が走る。マイケルは明らかに怒っていた。でも彼の口から出た言葉は「怒ってないよ。これはloveなんだ」。スタッフに対するlove、音楽に対するlove、まだ見ぬ観客へのlove……loveの一言にすべてが込められていて現場が和む。そしてもっともっといいものを作ろうというエネルギーが生まれる。素晴らしい瞬間だ。厳しくてつらいこともいっぱいあるけど、ものづくりは本当に楽しくて素晴らしいことだ。そんな空気感を観る者に心地よく体感させてくれる。
マイケルのファン、音楽ファンだけでなく、ものづくりに携わる人には是非観てもらいたい一作だ。
posted by 山崎達璽 at 21:42| 映画レヴュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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