2013年01月16日

NHKスペシャル『父と子 市川猿翁・香川照之』についての随想

2013-01-06 22.45.10.jpg件のNHKスペシャル『父と子 市川猿翁・香川照之』ですが、さすがに正月休み最後のゴールデン中のゴールデンに放送されただけあって、様々な感想を見聞きします。
僕の目が勝手に選り好みしているとは思いますが、圧倒的に絶賛派が多いですね。それは父と子の生き様に対するものであったり、あそこまで突っ込んだ取材の姿勢に対してだったり。

もちろん、否定的な意見もあります。一番多いのは、
なぜに藤間紫さんに触れないのか?
確かに、猿之助・紫と云えば、“W不倫の果て……”の枕詞で語られてしまいます。そりゃ人類の歴史は所詮男と女が全て。その切り口がいちばん興味を引いて単純明快です。僕も幕の内外からいろんな話を聞きましたが、その真意なんて当人しか分からないことでしょう(苦笑)。
もちろんNHKの性質上、やはりそこには触れられないはず。でも、別の角度から見ると、これは父と子、さらには長男と長男が主軸です。背負っているものは比べものになりませんが、僕も長男の長男なので、その複雑な関係性はよく分かります。58分という放送時間で、そのデリケートな主軸がぶれてしまうと番組として成立しなくなってしまうと思います。まあ、そこらへんは民放さんに譲るということでしょうか(苦笑)。

それと、あのドキュメンタリーで描かれていることが全て真実だと錯覚してしまうのも危険です。
例えば、口上の引きの画。時系列では初日の舞台とされていますが、初日の猿翁さんは挨拶の最後に両手を掲げていたので、あれは別の日の映像です。そういうのは他にもあるでしょう。ま、これは映像の世界ではホワイト・ライですし、重箱の隅をほじくるような話なので置いておいて……
肝心要は、物事は多面的ですし、人間には多面性があります。ドキュメンタリーは作家(ディレクター)による一つの「解釈」に過ぎないと思うんです。取材した素材をその「解釈」に基づいて取捨選択して編集して仕上げていく訳であって、それは真実とは別の物です。

あのNスペについて、“綺麗事にすぎない”という辛辣な意見も散見しました。やはり、ホントのところは当の本人たちにしか分からないことです。でも、僕はそれでいいと思うんです。僕は高校2年の時に三代目市川猿之助の歌舞伎を観て、自分なりに解釈して、それから三代目さんの芸術観や人生観、生き様そのものを知るようになって、また自分なりに解釈して、それで自分の人生が豊かになったわけですから。

posted by 山崎達璽 at 22:34| 筆のすさび | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする